読書感想文2022
M.Nさん/自分中心の人間

課題図書:

欅の木

著者:

内海 隆一郎

 この話は、原田さんが田舎の家に移住する際に一本だけ残されていた大きな欅の木をきっかけに、元住民に憤りをつのらせていたが、元住民の矢口さんの話や、欅の木を置いていった事情を聞いて、欅の木への思いが変化していくという内容である。
 私はこの話の「欅の木は人間より先に住んでいた。それなのに、葉を落とすからって厄介者にするのは、後から来た人間の身勝手ではないか」という発言に共感した。人間はよく失敗したときや都合が悪いときに人や物になすりつけようとする。だが、それは身勝手にすぎず、自分の非を認めたくないという感情の表れであると思う。都合が悪くならないように何か手を打ったというのならまだしも、何も手を打たず、都合が悪くなったら人や物になすりつけるのは自分勝手以外の何物でもない。私は、こういう人にはならず、自分の非を認められる人間になりたいと思った。
 この話から、私が感じたことはもう一つある。それは、人は自分の都合ばかりで、自然を大切にしていないということである。近年人間による自然破壊が問題となっている。それは、人間の心に、人間が中心となって世界が回っているという意識しかないからではないだろうか。あくまで、人間は自然の中に「住まわせてもらっている」のである。だからこそ、過度な森林伐採など、自然を破壊する行為はしてはいけないと私は思う。
 この話で植辰という植木職人が言っていたように、「木には心がある」と私も思う。人間が木を大切にしていれば、木もそれに応えてくれると思う。私は木に対してではないが、似たような経験をしたことがある。私の家は畑を持っており、野菜を育てている。数年前、私は自分一人でトマトを育ててみることにした。最初は順調だったが、天候不順のためか葉がしおれてきた。それからも、私は一生懸命世話をした。すると、元気を取り戻したのかたくさんのトマトを収穫することができた。このような経験から、私も木などの植物は心を持っていて、人間が大切にすれば植物は応えてくれると思う。このことが事実であれば、人間が自然を大切にしていない現状では、どうなるのであろうか。事実、森林破壊によって、私たちの生活にさまざまな支障をきたしている。例えば、植物は光合成をして二酸化炭素を吸収し、酸素を放出してくれるが、植物の減少によって、二酸化炭素が増加し、地球温暖化が進行している。
 このように、私は「欅の木」から、人間は自分に都合の悪いことなどが起きると、人や物に責任をおしつけてしまったり、人間中心で物事を考えてしまったりすることを学んだ。私は、自分に都合の悪いことが起こっても、広い視野で物事を見ることができる人になりたい。また、自然と共生できるように、行動を見直していきたい。


《講評》

 元住民である矢口さんの、「欅のほうが先に住んでいたんですよ。」「葉を落とすからって厄介者にするのは、後から来た人間の身勝手というものではありませんか。」という言葉から、非を認めたくないという人間の身勝手さを読み取り、そうならず、非を認められる人間になりたいという姿勢を一貫して示すことができました。あなたの力強い意志が感じられます。さらに、人間の自然に対する身勝手な行動として自然破壊という環境問題を取り上げ、人間と自然との共生について深く考えることができました。その中でも、人間が中心となって世界が回っているのではないか、という指摘には鋭いものがあります。自然との共生の大切さ、そのために人間はどうすべきかを深く考えられたあなた自身には、何事にも責任感を持って取り組む姿勢を貫いていくことを期待します。