読書感想文2022
M.Yさん/未来を切り開くために

課題図書:

銃を撃つ

著者:

沢木 耕太郎

 「ダーン!」衝撃的なラストシーンでこの物語は幕を閉じます。この音は主人公のナツミがポストを狙い人差し指の銃口から銃弾を発射した音です。タイトルとこのラストシーンを見ればこれからどんなに恐ろしい物語を読み進めていくのかと思いましたが、予想とは違うストーリーです。ホッとしつつも、私たち中学生の日常の漂いから訴えていることとは何かと考えながらページをめくっていきました。
 ついていない主人公ナツミは高校生です。全滅かもしれない期末テストの帰り道、バスで小学校時代の友人マキと偶然出会います。マキとはちょっとした出来事から疎遠になってしまいました。ぎこちない会話の中で不幸の手紙が話題となりました。二人は不幸の手紙を出すべきか迷います。この内容を後ろの席で聞いていたおばあさんも不幸な手紙が届いたが出さなかったので子どもが亡くなったということでした。
 私がこの物語で印象に残っているのは、「今以上に思いもよらない不幸に見舞われても手紙のせいにするのはやめよう」と自ら決断した場面です。ナツミがおばあさんから出さないと後悔する、出しなさいと経験を交えての話を聞いた後に私なら出さないという選択はできないと思います。格好良さ、尊敬、羨ましさ、憧れ……いろいろな感情が湧き出てきました。
 ナツミの生活を私の日常に重ねてみると、リアルな平凡が切り取られたように書かれているように思えました。テストができなかった、カギをどこに入れたかわからない、髪の毛が決まらなく登校時間ギリギリになったなど「ついていない」と嘆くことは多々あります。そのような時、どのように考えるかというと私は大抵ナツミと同じです。周りや環境のせいにしてしまいます。「ついていない」の一言で片付けている気がします。自分の責任でこのようなことを招いてしまったという事実を受け入れたくないからだと思います。しかし、ここまでの行動から結果に至ってほとんど自分が原因となっていることの方が断然多いのです。そしてそれは自分で自分が見えていなかったのだと考えさせられました。
 ナツミは一人でバスに乗っていたら手紙を出さないという選択をしたのだろうか?と読み終えふと思いました。疎遠になったマキとの再会にナツミは初めはついてないと思ったでしょうが、二人の不幸の手紙という共通の悩みを解決していくうちに仲良かった時代に心は戻ったのだろうと感じました。同じ立場でしか理解し合えない感情や悩みがあり、二人はお互いに意見を交わし励まし合い乗り越えることができました。二人の友情から、きっとこうなんだろうという自分の思い込みでなく、しっかり相手を知ることの大切さを学びました。ナツミにとってついていない再開は最高の出会いへと変化していく所をとても好きです。必ずしも、ついてない事はついてない出来事のまま終わるとは限らないと教えてくれたからです。ついてないことがもし起こっても次の一歩で自らを変えていけるとわかったので、これからは周りや環境のせいにせず、次の行動をしっかり考えられる人へと成長できたらなと思いました。
 最終行でなぜ銃弾を発射したのか意味がわかりませんでしたが、何度か読み返すと、彼女たちの自信、不幸の手紙に負けない勇気を得たという現れだと感じました。その背景には自分で決断をしたということがあります。成功するもしないも、幸せになるもなれないも自分次第で、そこには必ず自らで決断しなければならないという筆者からのメッセージのように読み取れました。これから私は高校受験をはじめさまざまな決断を下し、道を切り開いていかなければなりませんが、そんな時はこの物語を思い出し、心に「ダーン!」という音を響かせ勇気を持って進んでいきたいです。


《講評》

 今以上に思いもよらない不幸に見舞われても、手紙のせいにするのはやめようと主人公が決意した場面を取り上げ、あなたと主人公を重ね合わせて、自分の行動について深く考えることができました。自分の弱さに気付けたところや、今後あなたにとってついていないことが起こっても、次の行動をしっかり考えられるように成長したいという考えを述べたところがとても良いです。また主人公が銃を撃つ真似をしたことの意味について考えることができました。主人公の心情の変化を丁寧に読み取り、成功するもしないも、幸せになるもなれないも自分次第という筆者のメッセージを理解することができました。最後にあなたが自らの人生を切り開いていきたいという強い決意を示したところが素晴らしいです。