読書感想文2022
M.Oさん/私は南の魔女

課題図書:

西の魔女が死んだ

著者:

梨木 香歩

 この本は、中学生になってまもなく、不登校になってしまった少女まいが、ひと月あまりを西の魔女こと大好きなおばあちゃんと一緒に暮らす。そして、おばあちゃんから「何でも自分で決める」ことが肝心だという魔女修行をしてもらい、おばあちゃんの愛情をたくさん受けながら強く成長していく物語。外部からの危険から自分を守ることや、自分の目標を達成するために意志の力を高めることの大切さを教えてくれる本だ。
 この物語の中で意志の力を強くするということについて考えさせられる場面があった。魔女修行で大切な「意志」について、まいがおばあちゃんに「意志の力は、後から強くできるのか。」と問いかけ、それに対しておばあちゃんが「少しずつ強くなれる。」と返答したところだ。少しずつ強くなるということは、どういうことだろうか。最初は何をしてもあまり変化がないように感じ、すぐには出ない結果に、そのうち怠け心や投げやりな気持ち、あきらめが出てくるが、物事をやめてしまうのではなく、それらのマイナスの感情に負けず、目標に向かって黙々と続けることで、大きなすばらしい結果につながると思った。これはまさに、これまで積み上げてきた努力で今があるという「ローマは一日にしてならず」ということだと思う。
 この物語を読んで私の心に一番強く残ったことは、おばあちゃんが大切にしていたにわとりを何者かに食い散らかされ、それは自分がきらっているゲンジさんの犬だと勝手に思いこんだまいが、おばあちゃんに注意されるところだ。おばあちゃんは、「自分の直観を大事にしなければならないが、その直観にとりつかれてはいけない。」とまいに言った。まいはゲンジさんをきらっていたので、ゲンジさんの身の回りのものが全て悪いものと思いこみ、単に「好ききらい」で判断をして、それが正しいと決めつけた。以前、私はまいのような経験をしたことがある。友達が泣いていたとき、近くによく人を泣かすいじめっ子がいた。私は友達を泣かせたのはその子だと思いこみ、「なぜ泣かしたのか。」と、怒りながら問いつめた。けれども、二人の話を聞くと、その子が一方的に悪いわけではなかった。私はこのことで、自分の直観だけでなく、相手の話を聞いた上で物事を考えなければ、間違った判断をしてしまうことを学んだ。人間には感情がある分、冷静になることはなかなか難しいけれども、このようなことを少しでも減らすためには、直観に感情を入れて色メガネで人や物事を見てはいけないと常に自分に言い聞かせなければならない。これは、社会で生活していく上でも大切なことだと考える。大人になってどの職業についても、自分の思いこみだけでつき進んでしまうと、小さなことも見落としてしまい、取り返しのつかないことになるかもしれない。そうならないために今から少しずつ練習しようと思う。
 私はこの本を読んで、将来なりたい人物像が前よりはっきりした。まわりの人たちに流されず、自分の強い意志を持ち、自分の直観だけで物事を判断せず、直観を大切にしながらも客観的に他方向から見ることができる目を持ち、一つ一つ自分の信じたことを成しとげていく人だ。私には将来なしとげたい夢がある。この夢を実現させるために、今していることが必ずその結果に結びつくと信じて、自分の意志を曲げず、小さな努力をあきらめることなく黙々とやり続け、目指す人物像に近づけるように自分を磨きたい。


《講評》

 『西の魔女が死んだ』という本を通して、自分が将来どのような人物になりたいのかを考えた素晴らしい読書感想文です。西の魔女であるおばあさんが言っていた「意志の力を強くする」ということがどのようなことか、深く考察することができています。また、ゲンジさんに対するマイの行動と自分自身の体験を結び付け、思い込みや直観だけで判断せず、相手の話をよく聞き、冷静に判断することが大切であることに気付いた点も素晴らしいです。これからも、「小さな努力をあきらめることなく」積み重ねて、Oさんの将来の夢、目指す人物像に近づけるようにがんばってください。