課題図書:西の魔女が死んだ著者:梨木 香歩 |
「魔女」という言葉にひかれてこの本を選びました。題名から魔法やファンタジーの世界が描かれているのかと期待して読み進めました。けれど、魔女とは普通のおばあちゃんのことで、魔法は全然出てきません。でも、私にはこのおばあちゃんがとてもみ力的な人に思えました。
おばあちゃんが主人公のまいへ教える魔女になるための修行とは、早寝早起き、運動、勉強、食事などの規則正しい生活をするといった当たり前のことばかりです。私もまいと一緒でなぜこんなことが魔女修行になるのだろうと不思議に思いました。おばあちゃんはまいに対して丁ねいに敬語を話します。それと同じように日々の生活も手洗いで洗たくしたり、書き損じの紙も大切にしたりと、とても丁ねいだと感じました。でも、わざわざ足踏みでシーツを洗ったり、にわとり小屋まで卵を採りに行くなんて時間もかかるし、めんどうくさくて私ならいやな気持ちになると思います。それでもまいは、文句を言わず、おばあちゃんの言う通りに生活して、めんどうくさいことや飼っていたにわとりの死という怖い場面ものりこえていって、えらいなと思いました。おばあちゃんは他にも手作りの虫よけ薬やジャムの作り方、若いころの思い出話などたくさんのことをまいに伝えます。そういう毎日の積み重ねの中で、おばあちゃんが魔女の必須条件だという、「自分で決める」という意志が少しずつまいの中に生まれていったのかなと思いました。私にも大好きなおばあちゃんがいます。一緒に住んでいるわけではないけれど、ピアノや料理、あみものを教えてくれたり、毎週手紙のやり取りをしながら、たくさんのお話をします。この話を読んで私ももしかしたら、おばあちゃんと魔女修行をしている途中なのかもしれないと思いました。
題名の通り、西の魔女であるおばあちゃんは死んでしまいます。まいは死に対して、悲しみや後悔の気持ちを感じているけれど、おばあちゃんが最後に残したメッセージを見つけることが出来ました。それは魔女の手ほどきを守って修行を続けていたまいが自分の意志を強く持って成長した証だと思います。西の魔女から東の魔女へ、おばあちゃんの意志は受けつがれていきました。私にとって死はその人がなくなってしまった悲しみやつらさなどマイナスな印象ばかりでした。けれども死が訪れても、その人が次の世代へバトンのようにつないだ大切な思いは決して消えることはないんだと感じました。この話に魔法は出てこないけれど、きっと私も毎日色々な人から大切なものをたくさん受け取っているんだと思います。普段の生活を丁ねいに行っていけば、いつか私もおばあちゃんのような強い意志を持った立派な魔女になれるのかもしれません。そんな風に考えると、毎日が少しわくわくする気がします。
《講評》
魔法の練習をするわけでもない、日常の地味で当たり前のことをくり返すのが魔女修行だと知っていだいた当初のい和感から、まいの成長や自身の祖母との交流を通して修行の意義に気づき、それがとても大切でおばあちゃんが伝えたかった思いだと理解できたことが書けました。また、まいがおばあちゃんの死に対して感じた心情も丁ねいに読み取ったうえで、「死が訪れても、その人が次の世代へバトンのようにつないだ大切な思いは決して消えることはない」との考察を行うことができた素晴らしい作品です。「魔女ってどんな人だろう」、「魔女になるには何が必要だろう」。そのことに気づくことができたNさんは立派な魔女予備軍ですね。とびっきり素敵な魔女になれるよう、これからも魔女修行がんばってください。楽しみにしています。