読書感想文2020
S.Hさん/毎日の積み重ねが魔法になる

課題図書:

西の魔女が死んだ

著者:

梨木 香歩

 僕がこの本を読んで感じたことは、毎日の小さなことの積み重ねが大きな変化を生むということだ。魔女・魔法と聞くと、呪文で何かを成し遂げたり、空を飛んだり薬を作ったりと、まるでハリーポッターのような世界を思い描いていた。
 しかし、まいのおばあちゃんの魔法は違った。「こつこつ丁寧に暮らすこと。」毎日きちんと早起きをして、きちんとご飯を食べる。ベッドを整えたり、洗い物をしたりする。そして自分で決めた仕事をして、お茶の時間には休憩する。なんでもない毎日の、小さな物事の積み重ねで、言うなれば地味なルーティンだ。
 僕もまいと同じような経験がある。五年生の時、おばあちゃんの家に泊まって、一日自立生活という家庭科の自由研究をした。まいと同じように朝起きて布団をたたみ、トイレ掃除やゴミ出しをしてご飯を作る。一日があっという間に終わってとても大変だった。こつこつ毎日のことをやるというのは、言うのは簡単だがやってみると結構辛く、自分一人だったら、なまけてしまって絶対にできない。精神力がいることだと実感した。小さなことでもきちんと続けられるなら、これが魔法の力と言えると思う。
 「自分で決めること」というのも、まいのおばあちゃんの魔法の要のようだ。自分で決めるといっても、好き放題にするのではなくて、例え困難でも必要だと思ったら、やると決め、失敗にめげずにやり遂げるということだ。
 僕は今、六年生で、来年中学受験をすることになっている。両親は仕事で忙しいのでおばあちゃんが僕の面倒をおみてくれる。五年生の時は、勉強をおばあちゃんにみてもらっていた。勉強を教えてもらうのではなくて、毎日二人で今日やることを確認し、ここまでやったら終わろう。できなくても、よく頑張ったと励ましてくれた。勉強の内容や量を、おばあちゃんと二人で決めていた。最初はおばあちゃんの言うなりだったけれど、六年生になった今では、今日やることも、無理だった時にどう修正するかも、だいたいは自分で考えられる。
 派手でなくてもきちんとやることが自分を変えるということを、僕はまいのおばあちゃんが言うように、少しずつ、知らない間に身につけていたのかもしれない。
 まいのおばあちゃんは、亡くなってしまったのだが、その後もまいは自分の中におばあちゃんの視線を感じるのではないかなと思う。おばあちゃんの言う通りにやる、期待に応えようと頑張るというのではなくて、まいならば自分で決めてできる。と、おばあちゃんが信じてくれていることが嬉しくて、力になるのだと思う。まいのおばあちゃんは、いつもまいへの温かい言葉を忘れず、最後にまいをきちんと東の魔女だと認めてくれた。その愛情と、積み上げてきた毎日の行動が人を支え、変えて行くのだと思う。
 僕も今、おばあちゃんと、生活や勉強で培ったこつこつと努力する力、自分で決めたことをやり遂げる力があると思う。これから何かやりたいことを見つけた時、その魔法のような力を持って、それに向かって頑張っていきたい。
 その時には、僕のおばあちゃんんは、まいのおばあちゃんのようにニヤリと笑ってくれると思う。


《講評》

 毎日の小さなことの積み重ねが大きな変化を生む、ということについて、自分の経験をあげながら書くことができました。主人公がおばあちゃんの家で取り組んでいた魔女修行にポイントをしぼり、それが人が成長するためにとても重要なことで、自分を変えることに役立つことを、自分に置き換えて説明できました。このような魔女修行や主人公の様子をていねいに読み取り、魔法の力とはどのようなものなのか、自分なりに考えを示した点も素晴らしいです。主人公の修行の内容は、簡単そうに思えるがとても難しいことを、わかりやすく説明しているため、いつの間にか生きる力が身についていたことについても、説得力があります。この、主人公のまいのように、これからも一つずつ積み重ね、目標を達成して下さいね。